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3.1 いろいろな力の種類を知ろう!

 運動方程式を用いれば、力が加わったときにどのような加速度で運動するかがわかり、加速度がわかれば、運動の様子(t秒後にどの位置にいてどのくらいの速度で運動しているか)が把握できるわけだったね。力の大きさは、もし人間が力を加えていれば、その人のさじ加減で決まるわけだけど、地球がものを引っ張る力、すなわち重力のように、人間が感知しない力もこの世には多数あるんだね。



 自然界に存在する力は、性質が実験によって調べられ、定式化されているんだよ。ここでは、様々な力について論じていこう!


3.2 まずは万有引力

 万有引力とは、2つの質量の間に働く、万物が有する引力のことだよ。君と君の目の前にあるパソコンの間にも、地球と月の間にも働いている力なんだよ。



 月と地球はひかれあう引力が働いているような気が何となくするけど、君とパソコンの間に引力は働かなさそうだよね。(実際に君がパソコンに引っ張られてくっついてしまうこともないね)実は、万有引力は2つの物体それぞれの質量に比例するんだよ。たかだか50kg程度の人間と、0.5kg程度のパソコンの間に働く力はものすごく小さいから、感じられないほどだからほぼ無視できるんだよ。一方で、地球や月の質量は10の24乗や10の22乗kgというように、人間とはけた違いの質量をもっているんだよ。かなり大きな力が働くんだね。

 万有引力について、もう少し詳細に見ていこう。月に働く力は、地球と月の中心の間の距離をrとおいて、各質量をMとmとおいて、次のように表せるよ。人間が物体に力を加えようとすると、触れなければならないわけだけど、万有引力はお互いに触れあっていなくても、ある種『遠隔的に』働くよ。







<万有引力をさらに突き詰めよう>

 もし、月と地球の距離が、より短かったり、あるいは長かった場合、力はどのようになるかグラフで整理しよう。横軸に地球中心からの距離、縦軸にその時の力を表すと次のようになるよ。



 もしも、月と地球の距離がもっと近かった場合、月に働く万有引力はもっと大きくなっていたはずだよ。

 運動の法則に従って、さらに考察しよう。作用・反作用の法則によると、月に与えられた力と逆向きの力が、月に力を与えた主、すなわち地球にも働くことになるはずだよね。実際に接触して力が働くわけではない、万有引力の場合にも同様にあてはまるよ。





3.3 重力とは!

 確かに、君とパソコンの間に働く万有引力は極めて小さく、感じられないレベルだが、君と地球の間に働く万有引力は、結構大きいよ。地球が地球上にある物体を引っ張る力を、万有引力の中でも、特に重力と呼ぶよ。





 さて、重力の大きさは高々数百メートルではほとんど変わらないことがわかるね。これは、地球の半径の大きさに比べ数百メートルという大きさが無視できるぐらい小さいからなんだ。



 地表面から数百メートルの範囲内において、地球から及ぼされる万有引力の大きさは、ほぼ一定と考えてよいよ。さあ、運動の法則を用いて、加速度を具体的に考えよう。



 ニュートンの運動方程式の力の部分に、具体的な『地表面位置』での万有引力の力を代入し、式を解くと、加速度は『万有引力定数』『地球質量』『地球半径』によって導き出されるね。『万有引力定数』に関しては、物理法則上、決して変わることのないある定数だし、地球の質量や半径も、当分のあいだは変わることのない不変値と考えられるね。つまり重力下における加速度は『一定』であり、常にマイナス、すなわち地球中心の方向を向いているわけだ。

 地球半径に比べ、数百メートルという距離は十分に小さかったため、例えばビルの頂上からボールを落とすといったような運動を考えるときは、ボールに働く力が万有引力、すなわち重力だけなら、常に加速度は一定、すなわち『等加速度運動』となるわけだよ。さらに、その加速度はボール自身の質量によらず、どのような質量でも一定ということだよ。



 gを用いて、重力を具体的に表すことができる。



3.4 垂直抗力について

 次に議論する力はかなり特殊な、初学者には難しい力になるよ。垂直抗力だ。この力をざっくり説明すると、2つの物体が接している箇所に働く力で、一方(玉など)が他方(机など)を押したとき、他方(机など)が一方(玉など)を押し返す力のことだよ。まずは例で考えよう。①玉に重力が働き、②重力によって玉が机を押し、③玉が机に押し返される様子がわかるよ。



 ③が垂直抗力だ。垂直抗力の『抗力』の意味は、押し返してくる(抗ってくる)力という意味で、垂直は、抗われる向きが面に垂直という意味を表しているよ。また、抗う力の大きさは、この例の場合は重力と同じ大きさだよ。



 ここまで聞くと、垂直抗力は簡単に思われるかもしれないね。上記のような簡単な例ではなく、少し複雑になってくると、理解しにくくなってくるんだよ。どこがって?垂直抗力の力の大きさとは、どのような値になるかが、特に難しいんだ。



 セオリーに従って考察しよう。まずは、玉が斜面や衝立を押している力を考えよう。玉は地球から重力を受けて、地球の中心方向に引っ張られるね。この時、玉は接点で、斜面や衝立を押しているよ。この押す力の大きさは、重力を斜面を押す方向(斜面に垂直な方向)と衝立を押す方向(衝立に垂直な方向)に分解することで、直感的に把握できるよ。



 斜面が押し返す力の大きさはどうなるだろう?斜面を押す力すなわち、重力の斜面に垂直な成分と等しいよ。衝立が押し返す力も同様だね。重力の衝立に垂直な成分と大きさが等しいね。



 重力を斜面に垂直な成分と、衝立に垂直な成分に分解すると、それぞれmgcosθと、mgsinθに分解されるよ。よって、斜面から玉が受ける垂直抗力の『大きさ』はmgcosθであり、衝立から玉が受ける垂直抗力の大きさはmgsinθになるよ。



 垂直抗力の大きさは、万有引力や重力のように一意に決まっていない。例えば、重力の場合はF=-mgと力の大きさを簡単に式で表せることができるが、垂直抗力の場合は、今回の斜面と衝立の例のように、働く力を一つずつ考えて、その働き方から『推定』する必要が出るよ。




3.5 張力について

 次もかなり特殊な力である、張力だよ。張力は、糸に『もの』がぶら下がっているとき、その『もの』を糸が支えるときに、『もの』に加える力の反作用のことを言うんだよ。



 力のつり合いから、張力の大きさを求めよう。張力も、垂直抗力同様、ある一意に決まる式があるわけではなく、その運動の状況から『推定』される力なんだね。





 玉に働く力をすべて記述しよう。



 玉に働く力を上下、左右に分解して、力のつり合いを考えよう。横方向にはT1とT2がバランスし、縦方向にはT1とT2とmgがバランスするね。





3.6 静止摩擦力と動摩擦力

 ざらざらした机の上で箱を滑らせよう。机と箱の間に摩擦力が働くというのは、経験的に知っていることだよね。摩擦力とはもっと具体的に、どのように式で記述できるだろうか。議論してみよう。

<静止しているときにも摩擦は働く>

 ざらざらした机の上に箱を置こう。その後、ゆっくりと指で、横から力を加えよう。箱は動かないよね。



 箱は指から、右方向に力を受けるね。もし摩擦力がなければ、そのまま箱は右に加速していくわけだけど、摩擦力が箱に左向きにかかることで、静止し続けるわけだね。もちろん、作用・反作用の法則で、摩擦力の反作用として、摩擦力を箱に与えた机に、向きが逆の右向きの力がかかるよ。



 箱に注目して運動方程式をたてる。箱は静止しているわけだから、縦方向にも横方向にも加速度はゼロだよ。その結果、箱にかかる摩擦力は、指で押す力に一致するんだよ。



<さらに押してみよう>

 静止している限り、横から押す力と等しい大きさの摩擦力が働くわけだけね。つまり弱く力で押しているときは、弱い摩擦力が働き物体は静止するし、だんだん押す力を強くしていくと、摩擦力も強くなっていくわけだね。では、指で押す力をさらに、さらに強くしていくとどうなるだろうか?限界に達したら、ようやく物体は『動き始める』わけだよ。



 横滑りを開始する限界の力は式で表すことができるのだろうか。机の上のざらざらが強いほど、大きな力まで耐えることができるはずだよね。物体が重いほど、強い力まで耐えることができるはずだよね。



 横押しの力に耐えることができる、最大の摩擦力は、静止摩擦係数と床からの垂直抗力の大きさに比例するよ。重力ではなく、垂直抗力に比例することが『みそ』だね。あとで説明するが、斜面に置かれた箱に働く摩擦を考えるとき、垂直抗力に比例するという考え方が役にたつよ。

<さらに、さらに押してみよう>

 横押しの力に耐えられるぎりぎりまで力を加えた後、さらにもう少し押してやるよ。そうすると、横押しの力に耐えられなくなって、箱は動き出すね。実際に身近なもの、例えば消しゴムとかでやってみてくれ。気づいたかい?ぎりぎりまで押しているときの摩擦力と、動き始めた瞬間の摩擦力の強さを比べてみてくれ。動き始めた瞬間に、摩擦力が弱くなったのを感じ取れたかい?



 動き始めたあとの摩擦力は、動く速度によらずある値、μ'Nになるよ。μ'は動摩擦係数、Nは垂直抗力になるよ。



 横軸を、指で押す力、縦軸を摩擦力としてグラフを書いてみよう。





<運動の様子を予想しよう>

 いきなり式をたてるのではなく、まずはどんな運動になるか予想しよう。最初、θ=0の時、箱は地面にまっすぐおかれているだけで、横方向に力はかからないね。つまり、斜面に水平方向の加速度はゼロのはずだ。



 角度が少しずつ増えていくね。重力の斜面方向の成分が出てくるはずだ。これは、斜面水平方向の力が箱にかかっているってことだよ。斜面から箱に摩擦力が働くね。θが十分小さいとき、重力の斜面方向の力は小さく、静止摩擦力を降伏させることができず、箱は静止しているはずだ。



 角度がさらに大きくなってくると、重力の斜面に平行な成分も大きくなってくるよ。途中までは摩擦で静止させることができるが、角度が十分大きくなると、摩擦力は降伏し、箱は滑り始めるよ。



<運動の軸を決めよう>

 次に、x軸の向きを決定しよう。向き、方向ともに、君の好きなように決めてよいよ。軸の向きに従って運動方程式をうまく立てれば、どのように軸を選んだとしても最終的には『正解』にたどり着けるよ。ただ、うまく軸を選ばないと、解くのが難しく少し面倒なことになるよ。軸の選択は大切だ。今回は斜面を下る方向にx軸を選ぼう。



<力の向きを整理し、運動方程式をたてよう>



<力の向きを整理し、運動方程式をたてよう>






3.7 ばねによる力

 古典力学頻出の力をいろいろ見てきたわけだけど、だいぶ終盤に差し掛かってきているよ。次に議論するのはばねによる力だ!



 ばねとは伸び縮みが自在であり、なおかつ常に力が加わっていない状態に復元しようとする性質を持っているよ。力が加わっていないときの長さを『自然長』と呼ぶよ。ばねの両端を持って引っ張ると、自然長に復元するように『縮む力』を生み出すよ。逆に押し縮めると、『伸びる力』を生み出すよ。ばねの一端を動かない壁につなぎ、もう一方に玉をつないだ時も同様だだね。ばねが自然長に復元しようとして、玉に作用する力のことを『復元力』と呼ぶよ。



 ばねが出す力は自然長からの伸び縮み変化量(正の値)と、ばね固有の伸びやすさを表す定数、ばね定数に比例するよ。伸びるときと縮むとき、力のプラス・マイナスが違っていたり、伸び量、縮み量が複雑だったりするけど、整理すればより簡単に、一般化することができるよ!





<運動の様子を予想しよう>

 玉には重力が働き、下向きの力が生じるよ。玉は重力のせいで、下向きに動くわけだけど、つながっているばねも一緒に伸びるよね。その結果、ばねは元の長さになろうとする復元力を生じるよ。重力と復元力が釣り合った位置で、玉は静止するはずだよね。



<運動の軸を決めよう>

 すきなように決めることができるよ。運動のイメージに合致するように軸を決めると、問題を楽に解くことができるよ。今回は天井を原点として、下向きが正になるように軸を決めよう。



<力の向きを整理し、運動方程式をたてよう>



 質量がmのため、重力はmgとなり、ばね復元力はばね定数がkで、伸び量がx-x0のため、-k(x-x0)になるね。x軸を下向きが正としているから、重力は正、ばね復元力は負になるよ。





3.8 浮力とは

 この章最後の力について言及するよ。浮力とは、液体に物体を入れたとき、物体に対して上向きに働く力だよ。物体を浮かせる向きに働くため、浮力と呼ばれているよ。



 コップの中に水を張って、ピンポン玉を入れてみよう。ピンポン玉は沈むことなく、水面付近に浮かぶはずだね。さて、ここで注意。ピンポン玉は全く沈まないわけでもなく、完全に沈むわけでもなく、半沈半浮の状態になっているよ。



 浮力は沈んだ体積(厳密には質量)に比例した量だけ生じるんだよ。式にするとこのような感じだ。



 密度とは、単位体積当たりの、質量という意味だよ。例えば今メートルという単位を長さの単位で使っているとすると、体積は立方メートルになるよ。単位体積当たりとは、1立方メートル当たりという意味で、1立方メートル水を集めてきたときに、何キログラムになるのかということになるよ。





 浮力は沈んでいる体積に比例する。浮力は物体がすべて沈んだときに最大値をとるため、すべて沈んだときの浮力よりも、重力のほうが大きかったら、物体は沈む一方である。頭が浮き出るか否かは、物体がすべて沈んだと仮定したときの浮力が、十分大きいか否かで決まる。











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